ZENYU
「連続◯日」を数えるのを
やめたら、続いた。
何かを絶つためのアプリです。ただし、連続日数のカウンターは付いていません。付けないことが、このアプリの設計そのものです。
開発中 — 2026年
Your own target
こちらから対象を指定しません。名前を書けば、それが対象になります。
いくつでも登録できますが、最初は一つだけにすることを勧めます。同時に複数を絶とうとすると、片方が崩れたときにもう片方も一緒に崩れます。理由は次の節に書きました。
The counter
一度やってしまったあと、次の日も、その次の日も崩れる。あれは意志が弱いからではなく、数字の作りのせいでもあります。
この手のアプリの多くは連続日数を表示します。27日目に一度やってしまうと、翌朝それは 0 になる。27日ぶんの行動は消えていないのに、画面の上では消えます。
依存行動の研究では、この「一度の逸脱を、全部の失敗として受け取ってしまう」反応に名前が付いています。禁欲違反効果(abstinence violation effect)といって、マーラットとゴードンが1985年に再発予防の枠組みの中で記述したものです。禁煙や断酒の研究で繰り返し観察されてきました。一度の逸脱そのものより、そのあとに来る「もう台無しだ」という解釈のほうが、崩れ方を決める。
0に戻るカウンターは、その解釈を毎朝、数字の形で押し付けてきます。一度の滑りを、台無しに翻訳する装置になっている。
連続日数カウンター
—日
積み上げ(できた日の合計)
—日
90日間 — 押すと、その日を「やってしまった日」にできます
同じ行動です。同じ90日です。片方は「あなたは何度も失敗した」と言い、もう片方は「あなたはこれだけやった」と言う。どちらも嘘ではありません。だとしたら、毎朝どちらを見せるかは設計の選択です。
What it records
数を競わせないために、記録するものを絞りました。
積
連続ではなく通算です。滑っても減りません。90日のうち83日できたなら、それは83日です。7回やってしまった事実はどこにも消えませんが、83という数字を取り上げる理由にはなりません。
因
時刻、場所、直前の気分、寝た時間。滑った日にこれだけ聞きます。責める言葉は一言も出しません。
三度も書けば、自分のパターンが自分で見えます。臨床で使われる引き金の洗い出しと同じやり方で、意志の話をせずに手を打てる場所を探すためのものです。夜中に一人で暇なときのように、条件が分かれば環境のほうを変えられます。
代
やめるだけだと空白が残り、空白は元の行動に埋め戻されます。だから「やらなかった」ではなく「代わりにこれをした」を記録します。
これは思いつきではなく、習慣逆転法という手法の中心にある考え方です。アズリンとナンが1973年に、癖や反復行動に対して「代わりに行う両立しない動作」を置く方法を報告しています。歩く、水を飲む、その場を離れる。何でもかまいません。
The one friend
ランキングも、掲示板も、匿名の大人数も作りません。
アーナンダよ、そう言ってはならない。善き友を持つことは、この道の半分ではない。それは、この道のすべてである。
相応部 45.2 半分経(ウパッダ・スッタ)— 大意
善友(ぜんゆう、kalyāṇa-mitta)は仏教の言葉で、修行を共にし、正しい方向へ引き戻してくれる友のことです。上の経では、アーナンダが「善き友を持つことは道の半分ですね」と言ったのに対し、ブッダがそれを訂正して「半分ではなく、すべてだ」と答えます。
行動を変える研究でも、ここは強い部分です。誰かに報告する相手がいることは、意志の強さより安定して効きます。ただし人数が増えると壊れます。見ている人が多いほど、良く見せたくなる。良く見せたくなると、記録が嘘になる。嘘の記録は、何の役にも立ちません。
だから善友は一人だけです。滑った日は、その一人にだけ通知が行きます。相手にできることは、返信を一つ送ることだけで、点数を付ける機能も、励ます定型文もありません。
Honest limits
先に書いておきます。ここを読んでがっかりするなら、たぶん合いません。
やめたいのにやめられない状態が続き、仕事や人間関係、お金、健康に実害が出ているなら、それは意志の問題ではなく、相談できる領域の話です。アルコール、薬物、ギャンブル、ゲームには、それぞれ専門の相談窓口と治療があります。
お住まいの都道府県・政令市の精神保健福祉センターが、いずれの相談も無料で受け付けています。どこへ行けばいいか分からない段階でも大丈夫です。
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 から、お住まいの地域の窓口につながります。
このアプリは、そうした相談の代わりにはなりません。並行して使うぶんには構いませんが、順番としては相談が先です。
Status
設計が固まった段階で、まだ配布していません。作るのは Flutter で、Android から出す予定です。記録は端末の中に置き、善友への通知以外に外へ出しません。
「こういう機能が要る」「この数字は見たくない」といった話があれば、info@toriumis.com か、スタジオトリウミの感想欄へどうぞ。特に、実際に続けている人・続かなかった人の話が知りたいです。
出典
Marlatt, G. A., & Gordon, J. R. (1985). Relapse Prevention: Maintenance Strategies in the Treatment of Addictive Behaviors. Guilford Press. — 禁欲違反効果の記述。
Azrin, N. H., & Nunn, R. G. (1973). Habit reversal: A method of eliminating nervous habits and tics. Behaviour Research and Therapy, 11(4), 619–628. — 代わりに置く動作(拮抗反応)について。
相応部(サンユッタ・ニカーヤ)45.2 半分経(Upaḍḍha Sutta)。— 善友についてのブッダとアーナンダの対話。訳は大意で、逐語訳ではありません。